遺された空間に吹いた風――真夏の遺品整理現場より
8月末、青森県某村。
連日の猛暑が続く中、私たちは一軒の住宅での遺品整理作業に臨みました。
その日も気温は30度を超え、湿気を含んだ空気が体にまとわりつくようでした。
山間の村の静けさの中に、夏の終わりの熱気が重くのしかかっていました。
ご依頼をいただいたのは、故人のご家族の方。
この家には、50代の男性が一人で住まわれており、数年前から体調を崩していたそうです。
やがて病院で静かにその生涯を閉じられ、生活の痕跡だけが家に取り残されていました。
80坪の家に刻まれた、静かな暮らしの記録
現場は、およそ80坪の木造一戸建て。
長年住まわれてきた家には、物置や和室を中心に、数えきれないほどの生活用品が残されていました。
物置には、自転車のパーツや整備道具、DIY資材が所狭しと並び、まるで時間が止まったかのよう。
工具の手入れが行き届いていたことからも、手先の器用さと几帳面な性格がうかがえました。
和室には、丁寧に畳まれた衣類や布団、整然と積まれた収納ケース、読みかけの本が山積みに。
暮らしの名残がそのままに残り、静かに時間が止まっているような感覚に包まれました。
灼熱の中の整理作業
作業は3日間にわたり行われました。
真夏の終わりとはいえ、家の中の気温は35度近く。
窓を開けても風はなく、防護服を着ての作業はまさに過酷そのものでした。
しかし、私たちが向き合っているのは、“物”ではなく、その奥にある「暮らしの記憶」です。
たとえ部屋の中がどれだけ散らかっていても、その一つひとつに、過ごしてきた日々や想いが染み込んでいる――。
だからこそ、私たちは片付けという作業を通して、故人の人生に静かに寄り添うことを大切にしています。
Before / After
~ 空間に、もう一度静けさを ~
こちらは、物置と和室の整理前後の様子です。
整理前(Before)

乱雑に積み上げられた荷物の中には、日常がそのまま残されていました。
暑さと湿気の中、ホコリにまみれた空間に、確かに“生きた証”がありました。
整理後(After)

すべての遺品を丁寧に整理し終えた後、そこには静かで清らかな空間が戻ってきました。
床一面に光が差し込み、部屋がまるで「ありがとう」と語りかけてくるような、そんな気持ちになった瞬間です。
ご家族のひと言に込められた思い
作業完了後、ご家族の方からいただいたのは、静かなひと言でした。
「このままにはできなかったけれど、どこから手をつけていいかわからなかった。丁寧にやっていただいて、本当に助かりました。」
その言葉に、私たちのすべての疲れが報われた気がしました。
最後に
遺品整理とは、残された“物”を扱う仕事ではありません。
それは、そこにあった“暮らし”や“記憶”と丁寧に向き合う、大切な仕事です。
たとえ真夏の暑さの中であっても、私たちは一軒一軒、心を込めて対応しています。
生前整理・遺品整理でお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
心をこめて、お手伝いさせていただきます。
