遺品整理コラム

遺品整理から紡ぐ、新たな物語

遺品整理チェックリスト

昨年の冬、秋田県在住の方から、八戸市にある実家の遺品整理に関する問い合わせをいただきました。

依頼者は遠距離を考慮して、見積もりに立ち会うために一日、そして実際の整理作業にもう一日、この二日間を週末の土日に希望されました。幸いにも、依頼者の希望に応える形でスケジュールを組むことができました。

故人の物から新たな命へ

遺品整理チェックリスト

遺品整理の過程で、故人が大切にしていた品々の中には、まだ使用可能なものが多く見られました。私たちの組合には、「四次元ポケット」というメンバーがおり、彼らは約110点の品物を買い取りました。

遺品を買い取らせていただくことは、単に物を整理すること以上の価値を生み出します。それは故人の愛した物たちが新たな命を吹き込まれ、別の誰かの手に渡ることで、その物語が続いていくことを意味します。

依頼主からは、この取り組みに対して大変喜んでいただきました。私たち組合にとっても、非常に価値のある経験となりました。

未来への架け橋としての遺品整理

遺品整理や生前整理は、一つとして同じものはありません。それぞれの依頼には、故人と家族の独自の物語があります。

私たちは、それぞれの物語に敬意を払い、依頼主とその家族が新たな章を始めるお手伝いをすることに、深い責任感を感じています。私たちの役割は、ただ遺品を整理することだけではありません。それは故人の遺した物語を尊重し、その記憶を大切に扱うこと、そして残された家族が前に進むための支援をすることです。

この仕事を通じて、私たちは人生の脆さと、物が持つ深い意味、そして人と人とのつながりの大切さを学びます。遺品整理は、故人を偲び、生きている私たち自身にとっても、大切な教訓を残してくれます。

今後も私たちは各依頼主に寄り添いながら、その人らしい遺品整理を実施していきたいと思います。

2024.02.15

遺言書の正しい作成とトラブル回避のポイント

遺言書を書く年配の男性

遺言書を書く年配の男性

遺言書の作成は、自身の財産を死後意図した通りに分配するための重要な手段です。このプロセスは、遺産争いを防ぎ、故人の意志を尊重するために欠かせません。しかし、遺言書の作成は複雑で、不適切に行うと意図しない結果を招く可能性があります。

法的要件を満たしているか

初めに理解すべきは、遺言書が法的要件を満たしているかどうかです。自筆証書遺言の場合、民法では全文、日付、氏名の手書きと押印が必要です。PCで作成された遺言書の本文は無効とされるため、これらの要件を確実に満たすことが重要です。特に、日付に関しては「2023年10月1日」のように具体的な表記を用いる必要があります。

遺言書の内容に関しても注意が必要です。例えば、相続人の指定が不明確な場合、誰が財産を受け継ぐかに関して争いが生じる可能性があります。遺言では、相続人の続柄、名前、生年月日を明記し、財産をどのように分配するかを具体的に指定することが重要です。

また、相続資産の指定においては、資産の金額が変動する可能性にも注意が必要です。特に銀行口座の預金の場合、遺言作成時と死亡時の残高が異なることがあるため、割合で相続させることが一案となります。

2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで、遺言書が法的要件を満たしているかの確認が可能です。また、公正証書遺言の場合、形式や内容に関する専門家の助言を受けることができ、より確実な遺言書を作成することができます。

遺言書の作成には緻密な注意と計画が必要です。遺言書の法的要件を理解し、財産の明確な指定、すべての財産への言及などを行うことで、故人の意志に沿った適切な財産の分配を実現し、遺産争いを未然に防ぐことが可能です。適切な遺言書の作成は、遺族に対する最後の思いやりと言えるでしょう。

 

2023.12.29

遺品整理と電子マネー 備えておくべき問題とその解決策

高齢者がスマートフォンを操作。周囲には思い出や記録を示すデジタルアイコンが浮かぶ

遺品整理は、亡くなった方の大切な物を整理する大事な作業です。昔は、家や現金、宝石など、手に取ることができるものを整理することが多かったと思います。しかし、今はインターネットが普及して、デジタルの財産も大切にしなければならない時代です。

特に、「電子マネー」が生活に欠かせないものとなり、遺品整理が以前よりも複雑になっています。今回は遺品整理と電子マネーの関係や、どう対応すればいいのかについて、わかりやすく説明します。

高齢者がスマートフォンを操作。周囲には思い出や記録を示すデジタルアイコンが浮かぶ

電子マネーの普及

今や日本でもお金を払うときに、現金ではなくスマホやカードを使う「キャッシュレス」が当たり前になってきました。実は、ここ数年でキャッシュレスを使う人がぐんと増えて、特に都会ではもっと普通のことになっています。

政府も「2025年までにもっとキャッシュレスを増やそう!」と、様々な制度を設計しています。お店側も、お客さんが楽に買い物ができるように電子マネーを取り入れることが多いようです。しかしこの便利さが、亡くなったあとの遺品整理で思いがけない問題を出している場合があります。

遺品整理における電子マネーの課題

  • アカウント情報の不明
    故人がどの電子マネーサービスを利用していたか、またそれらのアカウント情報が何かを把握するのが困難です。
  • パスワードがわからなくなる
    アカウントにアクセスするためのパスワードやセキュリティ情報がわからないと、遺族はその資産に手を付けられません。
  • サービス提供企業ごとの対応の違い
    電子マネーサービスごとに、故人のアカウントに関するポリシーや対応が異なり、遺族がそれらを一つずつ理解し対応する必要があります。
  • 資産の確認困難
    故人の電子マネー残高がいくらなのか、またそれがどのように使われていたかを知ることは、時間と労力を必要とします。
  • 法的な手続きの複雑さ
    故人のデジタルアセット(資産として価値のあるデジタルデータ)を正式に相続するには法的な手続きが複雑であることが多いです。

法律と規制の進展

電子マネーが増えると、それに合わせてルールも更新されています。例えば、インターネットのお金の相続のルールが整えられたりしています。

しかし新しいルールはわかりにくいことが多く、家族がどうしたらいいか戸惑ってしまうことも。専門家は「インターネットのお金の相続は新しい分野のため、家族が正しく進めるにはもっと情報とサポートが必要」と話しています。

対応策と推奨事項

  • 情報の整理
    故人が利用していた可能性のある電子マネーサービスのリストを作成し、それぞれのアカウント情報やパスワードが分かるものを収集します。
  • 専門家の意見を求める
    法的な知識が必要な場合は、弁護士や遺産整理の専門家に相談します。
  • サービス提供企業との連絡
    故人が利用していたサービス提供企業に連絡を取り、残高確認や相続の手続きについての情報を求めます。
  • 法的な手続きの遵守
    電子マネーの相続には、特有の法的手続きが必要です。必要な書類を整え、適切な申請を行います。
  • デジタルアセットの管理計画
    未来を見据え、家族がデジタルアセットを管理するための計画を立てます。例えばパスワード管理ソフトウェアの使用や、アカウント情報を含めた遺言の作成などが挙げられます。

おわりに

遺品整理と電子マネーは、時代が変わるにつれて、予想もしなかった方法でつながっています。

家族は、この新しい問題に立ち向かう準備が必要です。故人の大切にしていたデジタルの財産を守り、適切に引き継ぐためには、正しい知識と計画が必要です。

電子マネーという見えないお金の管理は新しい挑戦かもしれませんが、家族の絆を深め、故人の意志を尊重する大切な一歩でもあります。

進化する技術や社会の変化に対応するためにも、私たちは柔軟に学び準備を進めていく必要があります。

2023.10.30

認知症の進行前に知っておくべき生前整理の方法と目的

認知症のシニアのイメージイラスト

認知症のシニアのイメージイラスト

認知症とは、脳の機能の低下により、記憶力や判断力が衰え、日常生活に支障をきたす病気です。

高齢者の増加とともに認知症患者も増加しており、社会的な問題となっています。認知症になると、財産管理なども困難になるため、生前整理が重要となります。

認知症の理解

認知症は、多岐にわたる症状を示します。その主な症状と種類を以下に示します。

症状

  • 記憶障害: 一番初めに現れることが多く、新しい情報の記憶が難しくなります。
  • 認知障害: 物の名前が出てこない、日付や時間の感覚が失われるなどの症状があります。
  • 判断力の低下: 日常の判断が難しくなり、料理などの日常的な作業が困難になることがあります。

種類

  • アルツハイマー型認知症: 認知症の中で最も多いタイプで、約60-70%を占めます。
  • レビー小体型認知症: 記憶障害だけでなく、幻覚や幻聴が現れることがあります。
  • 前頭側頭型認知症: 人格や行動に変化が現れることが特徴です。

 

生前整理の重要性と方法

認知症の進行に伴い、自身の財産を適切に管理できなくなる恐れがあるため、生前整理が推奨されます。

生前整理の目的

  • 財産の整理: 自分が亡くなった後に残す財産を整理し、後のトラブルを防ぎます。
  • 遺言の作成: 財産の分配についての明確な意志を残すため、遺言書の作成が行われます。
  • 感情の整理: 自分の死後にどうなってほしいか、どう思っているかを家族と共有します。これにより、家族間のコミュニケーションが深まります。

 

生前整理の方法

生前整理を行う際の具体的な方法は以下の通りです。

  1. 計画の立案: 生前整理の対象となる財産や、整理の進め方、タイムラインなどの計画を立てます。
  2. 家族との協力: 家族や親族と協力し、理解を深めます。意見が対立する場合もあるため、コミュニケーションを密に取ります。
  3. 専門家の協力: 法律や税務などの専門的な知識が必要な場合、弁護士や税理士などの専門家に相談します。
  4. 実行: 計画に基づき、実際に財産の整理や遺言書の作成などを行います。
  5. 感情の共有: 最終的な整理が終わった後、家族と共に振り返り、感情の整理や共有を行います。

まとめ

認知症は、高齢化が進む中で増加している重要な問題であり、自身や家族の未来を考え、早めの対策が求められます。

生前整理は、自分の意志を明確にし、未来のトラブルを防ぐための重要なステップです。適切な計画と家族、専門家との連携により、スムーズに進めることが可能です。

自分と家族の未来をより良くするために、認知症の理解と生前整理の実践を検討することが重要です。

2023.08.22

青森の春に残された記憶:ある遺品整理の記録

遺品整理前のお部屋

遺品整理前のお部屋

令和5年の四月、春の息吹を感じさせる温かな風が街を包む中、我々は青森県某市の市営住宅で遺品整理の重大な任務に取り組みました。

ある住居で、時の流れと共に息を引き取られた方がいました。人生の最期を迎える場所は、静寂に包まれたこの写真1枚目に写るお部屋でした。そこには深い静寂が広がり、ゴミがあふれる光景が目の前に広がりました。その光景は一人で最期を迎えた方の深い寂しさを象徴するもので、我々はその光景から目を背けることはできませんでした。

依頼をしてくれたのは、関西方面に住んでいる方のお亡くなりになった方の姪さんでした。彼女から預かった任務は、とても繊細で深い敬意を必要とするものでした。

作業はまず最初に、依頼主から探してほしいとされた物(通帳や印鑑、貴重品等)や、保管すべき物(写真や書類等)の存在を確認する作業から始めました。その後は、可燃・不燃・粗大ごみ、資源ごみなどに分別整理し、それぞれを適切に搬出して処分する作業に取り掛かりました。そして最後に、部屋全体の清掃と消臭作業を行い、部屋を清潔で新たな生活が始められる状態にまで戻しました。

近年、核家族化が進行し、ご老人の孤独死が増えていることを、私たちは肌で感じています。それぞれの家庭の事情があり、それぞれの理由がある中で、誰かが必ずやらなければならない、これらの整理作業。私たち組合は、その任務を真心こめて、一つ一つ丁寧に行っています。

生涯を終えた方々の人生の痕跡、記憶、価値を大切にしながら、私たちは遺品整理を通じて、人生の尊さと刹那性を改めて認識します。それぞれの部屋から発見される品々は、その人が歩んできた道のりを静かに物語っています。これらの作業を通じて、私たちは人間の生の尊厳を深く感じ、その一部を引き継いでいく重大な使命感を抱いています。

2023.06.07

年度末に遺品整理をおすすめする理由

遺品整理中のイメージ

「遺品を整理しなければいけないけど、何も手を付けられないままズルズルと今年度も終わりそう…」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

… 続きを読む

2023.02.14

自分で食事をとるのが難しくなった時に備えるためのエンディングノート活用方法

高齢者に食事の介助をする介護士

エンディングノートというと「自らが亡くなった時に備えて用意しておくもの」と考える方が多いと思います。

しかしエンディングノートに書き記した内容は意外にも、生前の自分を助けてくれることもあります。… 続きを読む

2022.12.27

最後の社会貢献「遺贈寄付」

ハートを手渡すイメージ

終活ではさまざまな悩みごとが起こります。その中でも遺産に関することは、お金が関係するということもあり、遺される家族に対しても配慮をする必要があるなど大きな課題と言えます。

そんななか、最近注目され始めているのが「遺贈寄付」です。

… 続きを読む

2022.10.24

無料で使えるエンディングノートアプリ「わが家ノート」

マスクをつけてスマートフォンを見る日本人シニア男性と娘

「遺しておきたいけど書く手間が億劫」「紙に書くのだと内容を書き換えるのが難しい」など、エンディングノートに関する悩みはさまざま。

将来、家族や親戚に迷惑をかけないためにもきちんと遺しておきたいという一方で、上のような理由からエンディングノートをなかなか書き進められないという方も多いのではと思います。

そんな方でもスマートフォンやタブレットを活用することで、すきま時間に少しずつ書き進められるエンディングノートもあります。

アプリでエンディングノートを作る

わが家ノート

 

三菱UFJ信託銀行が2020年にリリースしたスマホ用アプリ「わが家ノート」は、文字通りエンディングノートを作ることができるアプリです。銀行に口座がなくても利用できます。

「わが家ノート」にはエンディングノートに関係したさまざまな機能があり、大きくは以下の3つが備わっています。

  • エンディングノート作成
  • 健康管理
  • 健康活動の見守り・専門家への相談

 

機能の中には、家族へのメッセージをビデオ録画できたり、財産リストをかんたんな流れで作成していけるなどもあります。

また記録した情報は、同アプリをインストールした他の家族へ送信も可能。その送信のタイミングも「今すぐ」「死亡後」「認証診断後」の3つが選べます。

「わが家ノート」はiPhone用・Android用の両方で利用できます。無料で使用できるのでお試しで使ってみて、良さそうであれば継続してみるということもしやすそうです。

2022.08.20

デジタル遺品をクラウドで残す方法(Apple編)

iPhoneを操作する様子

現代ではシニア世代においてもスマートフォン(スマホ)やタブレットを使うことがごく一般的になっています。

複雑な操作は覚えるのが難しくても、スマホで電話をかけたりLINEでやり取りをしたり、写真を撮影したりなど、スマホは日常生活で世代を問わないツールとなっています。

そこで気になるのがいわゆる「デジタル遺品」問題です。

… 続きを読む

2022.06.30