岩木山を望む部屋で——弘前に残された想いの生前整理

2026年1月5日から6日にかけて、弘前市内のマンションで生前整理のご依頼をいただきました。
現場は7階。天気の良い日には、窓の向こうに弘前公園、その奥にどっしりと構える岩木山を一望できる場所です。
今回は雪に包まれた景色でしたが、白銀の街並みの奥に静かに佇む岩木山は、晴れた日には凛として美しく、言葉を失うほどの眺望なのだろうと感じました。
ご依頼主は弘前市ご出身で、現在は東京にお住まいの方。
このマンションは、街にマンションが建ち始めた頃に「大好きな弘前を感じられる場所」として購入されたそうです。
夏になるとねぶた祭りの時期に合わせて帰省し、昼は街の賑わいを楽しみ、夜は窓から弘前公園を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごす——そんな思い出が、この部屋には数えきれないほど詰まっていました。
好きだった街と、手放すという決断
しかし、30年という歳月は、住まいだけでなく人の身体にも確実に影響を与えます。
年齢を重ねるにつれ、遠方から弘前まで足を運ぶことが難しくなり、次第にこの部屋を訪れる機会も減っていきました。
そして今回、苦渋の決断として「手放す」ことを選ばれ、生前整理のご依頼へと至りました。
作業前の室内には、当時の暮らしがそのまま残っていました。
畳の部屋に置かれた箪笥、鏡台、こたつ、台所に並ぶ調理器具。
どれも「使われていない物」ではなく、「使われてきた物」ばかりです。一つひとつに触れるたび、ここで流れてきた時間の重みを感じずにはいられませんでした。
何もなくなった部屋に、いちばん残ったもの
整理が進み、部屋が少しずつ空になっていくと、窓からの景色がより大きく、より近く感じられるようになります。
作業後、何もなくなった畳の部屋に立つと、外の雪景色と岩木山が、まるで主役のようにそこにありました。「この景色を、何度も眺めてこられたんだろうな」——そんな想像が自然と胸に浮かびます。
冒頭でも述べたように、今回はたまたま雪景色でしたが、岩木山がくっきりと姿を現す日は、きっと息をのむほど素晴らしい眺望なのだと思います。
同時に、引き継いでくれる方がいないまま手放される住まいが、これから地方ではますます増えていくのではないか——そんな一抹の寂しさも感じました。
遺品整理、生前整理は「片付け」ではありません。
それは、住まいに残された記憶と向き合い、人生の一部にそっと区切りをつける時間でもあります。
この部屋で過ごした夏の日々、ねぶたの熱気、静かな夜の岩木山。そのすべてが、この場所に確かに存在していました。
私たちは、物を運び出しながら、想いも一緒に受け取り、次へとつなぐお手伝いをしています。
この弘前の部屋が、新たな形で誰かの人生と交わる日が来ることを願いながら、雪の街をあとにしました。
